応援メッセージ

谷野 美智枝先生

医師の仕事は、患者さんに希望を与えること

この「応援メッセージ」で、すでに多くの先生がたくさんお話をしてくださっているので、私がつけ加えることはもうないと思いましたが、医学、医療の道を進んでいる、あるいは復職を考えている皆さんに、一つだけお伝えしたいことがありました。それは、私たちが携わっている医学・医療の仕事は、一体どんな仕事なのかという話です。

もしお子さんがいる人でしたら、「お母さんの仕事はね」と説明するとき、どう言うでしょう? 私は25年ほど医師を続けていますが、実はしっくりする言葉がなくモヤモヤしていました。そんなとき、学会帰りの飛行機の中で偶然に『彼女が目覚めるその日まで』という映画を観ました。原因不明の病気になった若い女性が、病院であらゆる検査を受けてもうお手上げとなったとき、精神科へ転院をすすめる医師に向かって彼女の恋人がこんなふうに言うのです。
「あなたたち医師は患者に希望を与えるのが仕事なのに、私たちを絶望に追いやってどうするのですか」と。その言葉に医師は衝撃を受け、ついにごく稀な疾患であることを突き止める、といったストーリーで、機会があればぜひ観てください。私はこの映画で頭がすっきりとクリアになりました。

医師の仕事、医療の仕事は、「患者さんに希望を与えること」なのです。目の前の患者さん、またその家族のために、決してあきらめずあらゆる可能性を考え、そして信じてベストを尽くさなければなりません。もちろん、医学の世界は猛烈なスピードで進んでいますから、常に勉強しブラッシュアップしなければいけません。でもその努力が目の前の患者さんの希望につながり、さらに未来の膨大な数の患者さんの希望につながる。そういう素晴らしい仕事なのです。

私たちが日常業務で忙しい中、なぜ苦しい思いをして論文を書いたり学会発表をするのかというと、それは自分が見つけた症例や研究成果を世界に発信することで、未来の誰かの希望につながっていくからです。決して自己満足のためではありません。自分自身も日々の業務が重なって忙しいときも、その希望のための仕事であることを忘れないでいようと思います。そう思うと、明日もがんばれますよね。皆さんも、心のどこかに覚えておいてくれるとうれしいです。

長 祐子先生

私は旭川医大を卒業したあと、北大病院の第一内科に入局しました。ここは患者さん全体を診る科で、その後病理学に興味をもって転向したのですが、ストレートに進まなかったことは自分の財産になっていると感じます。

たとえば、臨床経験があることで、患者さんや臨床医の状況が実感として理解できます。また、臨床医が必死に採取してきた検体であることがわかるので、私も全力で顕微鏡をのぞきます。それもまた患者さんの希望につながっているのです。

長い人生のうちで、子育てや家族の介護、また自分の体調などにより、思うように時間が使えなかったり、タイミングが合わなかったりする時期は誰にでもあるはずです。でも、それぞれの場面でベストを尽くすしかありません。私も子育て中は必死でよく分かりませんでしたが、今振り返ると後悔はありませんし、子育てがひと段落したこれからの仕事もすごく楽しみです。皆さんも、「医学・医療」という素晴らしいフィールドで仕事ができること、誇りをもって前へ進んでください!

旭川医科大学病院病理部 教授
谷野 美智枝先生

(2018年4月まで北海道大学大学院医学研究科 腫瘍病理学講座 腫瘍病理学分野に講師として在籍)